呼吸を変えて普段の生活の中で健康になる
息を吐く時は副交感神経が優位になって、息を吸うと交感神経が緊張するので息をゆっくりと吐くとリラックスできますよ、ということを聞いたことがある方が多いかと思います。
でも、実はこれ、少し間違えています。
息を吸う時に、腹部をドローイン(引っ込ませること)をしないでいると、横隔膜が下にさがって内臓をマッサージします。内臓を構成する平滑筋という筋肉は副交感神経で動きます。そのため、横隔膜が下にさがるタイプの呼吸をすると、内臓が動き、副交感神経が優位になります。
ですから、腹式呼吸であれば息を吸うときも副交感神経が優位になる要素がとても強いです。こう考えると、眠っている時の呼吸の基本が副交感神経なのも当然ですよね。
こうした知識を元に、腹式呼吸の方がカラダによいので、胸式呼吸から腹式呼吸に変えましょう!というなんちゃって健康記事を時々みかけるのですが、これは実は相当な間違いです。
起床時に意識的な腹式呼吸を継続することで、胃の動きが活発になるため、貧血傾向が強い人は、胃に血が集まり目がチカチカしたりぼーっとするという危険があります。貧血が強い人は、腹式呼吸を長時間せず、まずは血を増やすことを意識しましょう。
また、胸式呼吸がカラダに悪い、と言っている方は、おそらく胸式呼吸を大別すると2種類ある、ということを理解していないのだと思います。
胸で呼吸をしてください、とお願いをすると、多くの方の場合、息を吸うときに肩と腹部が上がり、吐く時にさがります。これが、多くの方がイメージしている胸式呼吸かと思います。
腹部をドローイン(引っ込ませる)して、肩甲骨を寄せ、肩を下げた状態で胸で呼吸をしてみてください。肋骨が前後左右に広がることが分かると思います。しかし、腹部をドローインしているので横隔膜は下にはあまり広がりません。
この呼吸、現在では、プロとして潜水競技を行う人が、肺活量を増やすために意識的に毎日30分以上継続する等、トレーニングとして取り入れられています。
そして、実はこの呼吸方法が、帯を締めていた日本人が伝統的に行ってきた呼吸なのです。(今でも狂言や能楽師はこの呼吸をするそうです。)
ドローインをしていると前方向に力が拡散しません。そのため、腹横筋真上から下にかけて負荷がかかる=腹横筋の筋トレになります。これが、腹部ドローインによる胸式呼吸で肺活量が増える原理です。
また、この呼吸方法は肺活量を増やすだけではなく、腹横筋そのものを強化してくれます。腹横筋は脊柱を支える重要な筋肉の1つです。そのため、背骨のゆがみが大きく、それが原因で腰痛や猫背等が起きている人によっては、ゆがみを解消し、痛みを軽減するという効果も期待できます。
当院では、呼吸が浅く、肺活量が少ないと思われる方や、脊柱を支える筋力がない(かつ積極的な運動をする体力がない)という方には、日常の呼吸を腹横筋胸式呼吸に切り替えるようにお願いすることがあります。
正しく腹横筋胸式呼吸をするためには、座位では常に腹部をドローインさせるため猫背等の不自然な姿勢の改善にも有効です。
女性の場合、この呼吸に切り替え、肺活量が増大すると、息を吸い込んだ時にブラジャーのアンダーバストがきつくて苦しくなる、というデメリットはありますが、それ以外は基本的にはあまり弊害はないかと思います。
是非、試してみてください♪
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