企業別にリスクマネジメントには得意不得意分野があります
昨日からTwitterでブログを紹介してくださっているコメントを見ていて気がついたのですが、リスクマネジメントという言葉、まだ、あまり正確には理解されていないんですね。
リスク、というのは「不確実性」を指します。事件や事故が起こるのかが不確実。プラスに働くのかマイナスに働くのかも不確実な状態のことです。
つまり、リスクマネジメントというのは、このプラスに働くのかマイナスに働くのかが分からない状態を管理するということを指します。
実際に起きてしまった被害や事件・事故はリスクではなく、インシデントと呼びます。事件・事故対応はインシデントレスポンス、と言います。
今回の計画停電、輪番停電は、停電が無計画に発生し制御できなくなることによってカリフォルニアの大停電のように無秩序に広がっていくというリスクを管理するために行う、リスクマネジメントです。
リスクマネジメントを行う際に大切なことは大きく2点あります。
1点目が、マネジメントできるだけの人材やスキルを用意して確実にリスクを低減(インシデントが起こらないようにする)こと。
そして、2点目が、現在行おうとしているリスクマネジメントに失敗すると、最大でどういうインシデントが起きるのか、そして、それを回避するためにはどういう不具合を関係者が被る可能性があるのか、をしっかりと関係者に伝える「リスクコミュニケーション」を行う、ということです。
昨日のブログの書きぶりで、もしかしたら誤解を与えてしまったかもしれませんが、私自身は、決して今回の輪番停電でこの2点目においてしっかりとした対策ができていたと考えているわけではありません。
ただ、それが今回の当事者である電力会社の責任なのか、というと、私自身はそう断言できない面が大きいと考えています。
リスクマネジメントは比較的手法が確立した社会科学です。範囲が膨大なため、全分野を完璧にこなる企業はまずありません。
重要インフラ、軍需・防衛といった社会基盤を支える企業、そして医療・介護といった命を扱う業態は、1点目のリスクを低減するための人材・スキルの整備に注力をしてコストを投入します。これは、各種法制度や監督官庁も、この方面に注力するように作られているので、各企業が主体的にそうしている、というわけではありません。
消費財メーカーなど風評被害による損失が大きい企業は、2点目のリスクを低減するために、広報や情報伝達経路の整備にコストを投入します。食品メーカー、製薬メーカーなどはこの分野のノウハウが豊富です。(ジョンソン&ジョンソンのタイレノール事件等が有名です)
インフラ企業においては、社内に2点目のスキル・ノウハウがそれほど充実しているわけではない、ということです。だからこそ、有事には、リスクマネジメント・コミュニケーション分野のコンサルタントや専門家というものが存在していて、不足している分野のスキルを提供する必要がありますし、平常時には、少しでも不足しているスキル・経験を埋めるように仕組みづくりの手伝いをしていく必要があります。
リスクマネジメントのコンサルティングビジネスから転身すると決めた時、私は、サービスは成熟しているし、どの業界でどのスキルが不足しているので、どういうサービスを提供していかなければいけないのかは明白だと考えていました。必要なサービスを、必要な企業に提供するための意思決定をできるし、してくれるものだと信じていました。
でも、今回の、最低限度の必要な情報さえマスコミに報道してもらえないという現実を見て、どうやらそうではなかったらしい、ということに気が付きました。
昨日の記事を書いたのは、マスコミを責めたり、批判したかったわけではなありません。個人的な意見ですが、配電・送電の仕組みに対する情報がほとんどない状態で報道をするとなると、批判的な論調でしか報道をすることができなかったということは、致し方の無いことだと考えています。
本来は、リスクコミュニケーションのプロが、どういう情報を出すべきなのかを的確にアドバイスをし、国民の不安を軽減していくべきであったし、平常時に仕組みづくりをサポートしているべきだったと考えています。
※最後に、
一応、女子です
多くの方が「男性」という前提で記事を読まれたようなのですが、一応、私、女子です。
親友がブログで記事を引用してくれていますが、この友人に対するコメントやリスクマネジメント関連で何度かメディアには出ているので、女子であるという証拠はあるかとw
オーナー(出資者)であって鍼灸師ではありません
組織犯罪対策コンサル→インフラ企業のリスクマネジメントコンサル→生活産業(医療・介護)企業のリスクマネジメントコンサル→生活産業の経営&コンサルという経歴です。
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