東洋医学の基本は引き算と足し算
東洋医学と西洋医学って何でこんなに違うんですか?
と聞かれることが多いのですが、私自身は、これといった違いを全然感じていないので、何がそんなに違うと感じられるのだろう、とかえって驚くことが少なくありません。
ある患者さんは「西洋医学や現代栄養療法では水分が足りていないから沢山水を飲みなさい、と言われたのに、東洋医学だと水分代謝が落ちていて水分を吸収できない状態(水毒)だから、水分は控えなさいと言われました。正反対じゃないですか!」と言います。
本当に正反対ですか?もう一度、よーく考えてみてくださいね。
水分代謝の能力が落ちていて、余分な水分が体内に滞留している状態。また、水分吸収が上手くいかず、必要な水分量が足りていない状態。
東洋医学であろうと、西洋医学であろうと、その患者さんの体がどういう状態にあるのか、という診断自体に差はありませんよね。
違いは「だからどうするのか」ということだけです。
☆不要なものが滞留している→不要なものを出す&余分なものを入れないことで消化器の疲弊を改善し健康体に近づける
☆必要なものが足りない→必要なものを入れることで消化吸収を行わせ体を作り上げる
健康な人であれば、必要な栄養を摂取すれば、各種消化器官が連携をして消化をして、汗や小便・大便として排出をします。
ですから、先に排出してから摂取すべきか、摂取してから排出すべきか、等と悩む必要はありません。
問題は、このバランスが崩れてしまっている人の場合。
不要な栄養素や毒素が体内に滞留すれば内臓は疲弊していきます。消化機能は更に低下します。ですから、可能な限り消化器官に不可を与えない形態で必要な栄養素を摂取しながら、不要な物を排出する、ということが必要になります。
朝ご飯を食べて栄養を摂取する方が良いか、食べずに内臓を休ませる方が良いか、どちらが正しいということはないのです。
内臓の疲労・疲弊を中心にケアするのであれば食べない方が良いでしょうし、栄養摂取を中心に考えるのであれば食べる方が良いのです。
これ、西洋医学であろうと、東洋医学であろうと、実は考え方に差はありません。
一見違って見えてしまうのは2つの理由があります。
(1)東洋医学には標準という概念がない
臨床検査の数値が標準外だったから不健康、という概念がありません。本人が元気だと感じていて、実際に不調がなければ健康、です。
そのため、例え各種消化器官が他人と比較して消化能力が低かったとしても、その消化能力に併せた食生活をしていて、本人がそれに満足していれば、病気ではないのです。
例えば、裏番長ですが、赤みの肉の脂を消化する酵素がありません。食べると皮膚にブツブツが出ます。西洋医学的には病気です。でも、肉が嫌いな裏番長にとって、何の問題もありません。東洋医学的には健康なのです。
このように、ある意味低空飛行の自分なりの健康、というものを重視するのが東洋医学。
患者さんが、自分なりの健康で良いと考えるのか、西洋医学標準の健康を求めるのかで、必要な医療行為が異なってきます。
(2)西洋医学の摂取・排出は2つの国家資格に分断されている
西洋医学の場合、摂取は栄養士、排出機能を向上させる専門家は医師です。
御存知のとおり、日本では管理栄養士の社会的立場がそれほど高くありません。医師と対等に意見を戦わせられる栄養士は、本当に少数です。
中には、両方の知識を有している医師もいますが、栄養療法に取り組んだ途端に、消化器や各種臓器の機能向上という「医学」の方のアドバイスをしなくなってしまう医師も少なくありません。
栄養療法、栄養士は主に「摂取」のアドバイスのみを行います。そして医師は「機能改善」「排出」のアドバイスを行います。
両方をバランスよくアドバイスする人は、極めて稀です。稀ではありますが、中にはいらっしゃいます。そして、その場合、特に、西洋医学だから東洋医学だから、という差はないのです。
排出機能が著しく落ちているのであれば、まずは排出機能の向上を優先させてから摂取を考える。(東洋医学的には、瀉法後に補法する、という表現になります。)
臨床検査の結果、必要タンパクなどが著しく低下していて生命維持に問題があるのであれば、経口では摂取を優先させ、各種施術(リンパドレナージュやカッピング、カッサ等)で排出をさせる。施術では対処ができないほどであれば、瀉血等の外科的処置を併用する。
西洋医学であろうと、東洋医学であろうとどちらも代わりはありません。
両者を表面的にだけ勉強し、具体的な対策が異なっているから、両者が違う、と誤解をしている方が少なくありません。残念ながら、医療従事者の中にも、そういう方はいます。
しかし、現実には、人の体という共通の対象を取り扱う医学が、全く異なる結論になるはずがありません。双方、否定・批判をしあう前に、その根拠まで掘り下げて学び合ってみてはどうかと思います。
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