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2010年5月19日 (水)

「井の中の蛙」と「全体像を理解した専門家」のどちらを目指すか

1つの会社・狭い人間関係の中だけで働いていると、他の人にとって当たり前の常識が欠落してしまうことが少なくありません。

例えば、ITの会社に所属をして情報セキュリティの対応をしていると、情報セキュリティの対応と言うとITを使うと思いこみがちです。

でも、実際にはプリントアウトをした紙の取扱いだったり、社内・店舗のレイアウト(内装・外装)等の方が大切なことが多いんです。

自分はセキュリティの専門家だと思っていても、実際に知っているのはセキュリティの中のほんの一部分で、オフィスのレイアウトを変えるだけで対応できるのに数千万円のITシステムを導入する必要があるという提案をしてしまったりするわけです。

これは消費者・お客様からしてみると、とんでもなく迷惑です。

あまりにもこうした迷惑が頻発したため、被害が起らないようにと「国際標準」というものができました。

情報セキュリティの分野であれば、ISO/IEC27001というものがあって、この標準を見てみると、情報セキュリティには大別して10のカテゴリーがあって、ITはそのうちのたった2つでしかないことが分かります。

あれ、今日は東洋医学の話しじゃないの?と思われた方、いえ、ここからが、東洋医学の話です。

情報セキュリティを向上させるためには、網羅的に定められた標準と現状を照らし合わせて、そのギャップを分析します。そのうえで、問題・課題を正確に把握をして、一番コストがかからない方法で対策をします。

これ、人の体でも同じです。本来は同じ事をしなければいけません。

そのため、以前、このブログでも書いたとおり、現在、経穴(ツボ)の位置や経絡を始めとした、東洋医学の「標準」を作ろうという動きがあります。

中国政府、韓国政府ともに真剣に取り組んでいて、昨年末にアメリカも本格参入を決めたそうです。日本も参入しようとしてはいるのですが、実際には完全に蚊帳の外。中国、韓国、アメリカから、全く相手にされてません。

日本と日本以外の東洋医学の教育や医療の両方の現実を知っている人にとって、理由は簡単かつ明確です。日本で「東洋医学」と言われている範囲だけでは、標準化の範囲に足りていないのです。

日本の「鍼灸」「指圧」の専門学校で教えられてる内容・国家試験の範囲は、中国・韓国・米国で「東洋医学」として教えられている範囲の約3/5です(範囲が狭い分、内容が深いですが、、)

そのため、米と中では免許が互換ですが、日本の鍼灸免許を持っていても、米国で鍼灸免許を取るためには追加で最低300時間の授業を受け、実技のテストも受けなければいけません。インターンとしての勤務が必要になる場合もあります。

しかし、日本の鍼灸しか知らない人にとっては、端から日本の鍼灸がどう見られているのか、ということすら知りません。そのため「中国やアメリカでは鍼灸師が漢方薬を処方できる」という情報だけを聞いて「鍼灸師が漢方薬を扱えるようになれば良い」などと発言する人がいたりします。

とんでもない話しで、受けている授業内容・範囲が根本的に違うので、今の鍼灸学校で教えられている範囲だけで鍼灸師が漢方薬を取り扱ったら、被害が続出します。

日本の「鍼灸」「指圧」と海外の「東洋医学」の授業内容を比較すると、日本で軽視されていたり、行われていないことに特徴があることが分かります。

・望診(顔や舌、皮膚の色を見て病状や体質を判断すること)
・動作分析(舌や四肢の動き・ふるえ、落ち着きのなさ等体の動きに現れている症状から判断すること)
・動作指導・呼吸指導
・施術中の皮膚の色の変化
・食事療法
・食材の判断
・漢方の方剤調合
・問診の際の動作所作や心構え

どれも「目で見なければ実施できないこと」です。

反対に日本は他国と比較すると「脈診(手首に指を置いて脈の早さや深さ等から判断をすること)」「施術中の皮膚の固さ」といった指先の感覚を極めて重視しています。

これは「鍼灸」「指圧」が目が見えない人の職業という側面が強いことによる、日本独自の現象です。そして、それはそれで日本の「鍼灸」「指圧」の文化です。

しかし、そのことを知らずに、自分が知っていることが東洋医学の全体を網羅していると思いこんでいるとしたら、それはあまりにも浅はかです。

特定の分野を深く理解することは大切です。

しかし、全体像を把握していない人が、正確な現状分析(課題・問題の把握)をすることはできません。学校教育で教えられないのであれば、本来は全体像を把握するために自分で必要な範囲の勉強をする必要があります。

しかし、まず「どうやら日本の専門学校で習う範囲は外国と比べると狭いらしい」ということそのものに気が付く必要があります。気が付いていないと、自分が知っている範囲だけで判断をしようとしてしまいます。

「情報セキュリティ」や「品質」といった分野では、ISO(国際標準)ができたことで、急速に「自称専門家」「自称コンサルタント」が淘汰されました。

東洋医学の分野でも、同じ事が、一日も早く起ることを期待しています。

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