第1回 東洋医学が分かりにくいのはワザと分かりにくくしているから
このブログや治療の過程で東洋医学に興味をもったので勉強してみたい、と思って本を買って読んでみたりネットで調べたんですけど、難しすぎて分かりませんでした、というお話をうかがいました。
そうですよね、分かりにくいですよね。私もそう思います。特に日本語で東洋医学を学ぼうとすると、無茶苦茶難しいです。
ところが中国語だと、そうでもない、と言います。なぜかと言うと、中国は、過去のある秘密を、もう秘密ではなくしてしまっているからなんです。
実は、東洋医学を学ぼう、知ろうとする人が最初に知っておかないといけない、しかし、日本語だとなかなか入手できない秘密というものがあるんです。
それは何かと言うと「東洋医学のしくみとして歴史的に公開されてきた情報は、わざと分かりにくく書かれている」という事実です。
世阿弥が「秘すれば花」と秘伝にするように弟子に伝えたように、伝統的にアジア圏では表向きに公開している情報と、口承(または秘伝として伝える文献)には差があったのです。
これは、東洋史学を学んだことがある人にとっては基本的な事実です(鍼灸科には東洋史学という授業がないので、鍼灸師でも知らない人はいるのかもしれませんが。。。。)
わざと分かりにくく書いた目的は「徒弟制度を維持し、自分の流派の利益を守るため」です。
師匠しか知らない情報があることで、弟子は丁稚奉公をします。日本には奴隷制度がなかったことになっていますが、この徒弟制度、事実上の奴隷制度です。
極めて少数の人の頭の中にしかない情報を知るために、弟子たちは必至に丁稚奉公をして奥義を公開してもらえる一番弟子になろうとしたのです。
そして、東洋医学におけるこの奥義の1つが「人体の構造」だったのです(秘伝の治療方法や漢方薬の調剤方法もありましたが、人体の構造が最大の奥義だったようです。)
そう、つまり、漢方医は、とっくの昔に人体の構造を知っていたんです。
このことは中国は認めていて、中国語が元の中医学の書物を読むと、明の時代には戦争でなくなった戦士を解剖したり、奴隷で生体実験をして臨床データを集めていたということを告白しています。
日本では死体を損壊することを穢れとして考えてきました。そのため、解剖が進みにくかった、ということは事実です。しかし、江戸時代には氷を使った低温麻酔による外科手術を行っており、漢方医は内臓を直に目で見て、どこに何があるかを知っていたのです。また、口承で内臓の位置を伝えられてきていたということが、明治時代に入ってから明らかになっています。
奥義とされていた情報を包み隠さず記載しなければ、分かりやすい入門書になるはずがありません。
しかし、専門分野の中だけで教育を受けていると、その分野の先達が行った失敗や恥を知る機会が限られます。
ですから、日本人が日本語の文献・教育を元に情報を集めて出版した東洋医学の入門書は、この「わざと分かりにくく書かれている本」の内容をベースに書かれているわけです。
そりゃあ、分かりにくいですよね。
というわけで、東洋医学の書籍を読むときには、まず「この文章の裏には何を隠そうとしてるんだろう」ということを疑わなければいけないのです。
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おまけ
蛇足ですが、最後に漢方医が人体の構造を知っていたという証拠を1つ挙げたいと思います。
その1つが、小石川養生所の事務記録です。江戸時代に小石川養生所ができた時に、庶民たちは「とうとう城外に人体実験をする場所ができた」「入院したら寝ている間に体を開かれる(開腹手術をされる)」と恐れて養生所には行かなかったため、2年かけて「体を開かない」「実験をしない」と説得し続けた、とあります。
しかし、1700年代に入ると、蘭学者杉田玄白はオランダ語の解剖学の書物を日本語に翻訳し、被差別部落の人に解剖を行わせ、自分はそれを見学しました。秘伝の流派から外れていた人間の冒険により、隠していた情報は公になったのです。
そして、明治時代に入り、明治政府に秘伝を公開しろと迫られた漢方医、鍼灸師達は、一部の秘伝を公開し、流派による垣根はある程度撤廃されたものの、それでも全てを公開し、蘭学・西洋医学と協力して臨床を行う、ということを拒否したのです。
その結果、政府による鍼灸廃絶運動が始まります。
冷静に考えれば、国を挙げて戦争に乗り出すためにあらゆる医学情報を収集しようとしている時に、奥義として自分たちしか知らない情報に固執しようとした人たちが邪魔になるのは当たり前のこと。なので、明治政府が鍼灸廃絶・漢方廃絶に乗り出したことは、政策的には合理的だったわけです。
今も昔も、嘘をついたり情報を隠そうとした組織が長期的には廃れていく、という流れは変わりがないのだと言うことがよく分かる出来事だと思います。
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